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症例9:耳介の丘疹
(ミニチュア・シュナウザー,4カ月齢, ♀) 約2ヶ月齢で購入、当時より痒みがみられ、平成14年12月11日近医受診。略全身の落屑と腹部の膿痂疹も観察され、抗生物質、シャンプーで治療後、平成15年1月28日当科紹介受診。初診時現症として、顔、四肢を中心に鱗屑の散在がみられた。また腹部には丘疹と軽度の苔癬化、耳介舟状窩に淡紅色小丘疹の散在が認められた(写真)。
![]() 臨床診断のポイント
丘疹は小さな隆起で、その多くは紅色を呈しています。この色調は炎症に起因し、隆起の内容は浮腫や細胞浸潤です。丘疹を呈する犬の主要な鑑別疾患は、感染症(膿皮症、皮膚糸状菌症、ニキビダニ症)、寄生虫疾患(ノミアレルギー性皮膚炎、疥癬)、自己免疫疾患(落葉状天疱瘡)です。丘疹は毛包性と非毛包性、さらに表皮内と真皮内に区分されます。自験例の丘疹は非毛孔性であり毛包性感染症は否定的、また痂皮を認めないことから表皮内細胞浸潤が著しい落葉状天疱瘡も否定的です。したがって寄生虫疾患が疑われます。発症年齢が若く、腹部に発症していることから、疥癬の典型像に合致しています。初診時方針のポイント
疥癬を疑う症例では、皮膚掻爬検査により虫体、虫卵、糞便を検出し、治療するのが理想です。しかし、本症ではこれらを検出できない症例もまれではなく、同様の駆虫による治療的評価が汎用されています。皮膚掻爬検査では、外科用円刃(10番)を用いて広く掻爬を行います。さらに被毛がある領域では掻爬による寄生体の検出が困難であり、体表を優しくクシや手で擦り落下する鱗屑を回収して鏡検します。治療にはイベルメクチンを選択し、200-400μg/kgを2週毎に2ないし3回反復します。なおコリーや一部の犬種は高用量イベルメクチンに感受性が高く、副作用が生じ易いので、その使用を控える傾向にあります。他の駆虫薬としてはマイタバンやフィプロニルが選択されます。 |