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症例58:肢端のかゆみ
(ノーフォークテリア,1歳齢,♂)

平成28年1月末より四肢端にかゆみと皮疹、同年3月背中に拡大し近医受診、抗菌薬、イベルメクチン、シャンプーで治療するも8月略全身に拡大、クラシッド、アポキルで改善なく当科紹介受診となった。

臨床診断のポイント

様々な皮疹が混在している時、臨床的、病態的首座となる皮疹に注目します。自験例では脱毛が強調されています。その病理発生は毛幹の異常、毛包の病的状態、毛周期の異常に大別されます。脱毛に同調する原発疹を認める場合は毛包の病的状態が予想されます。まだ若いことから、その病態として毛包の先天性疾患や感染症が鑑別です。自験例では膿疱とともに、瘻孔より血液を混じた膿汁が認められます。これらは毛包性感染症に合致しています。また均質な紅色と色素が混在し、皮表には毛包を超えた鱗屑が付着していました。これらの所見はニキビダニ症を示唆していました。

初診時方針のポイント

ニキビダニ症の評価には毛検査、皮膚掻爬検査等が汎用されます。確定診断には皮膚生検が有用です。また鑑別となる膿皮症や皮膚糸状菌症に配慮した細菌培養検査や真菌培養検査が有用です。自験例は若く、また慢性疾患であることから、全身状態や先天的要因の評価を目的に血液検査やX線検査を実施しました。臨床診断通り、毛検査でニキビダニを多数認めました。細菌培養検査で多剤耐性MRSIG分離、血液検査でCRP(17.81)を認めるも他に特記すべき異常なし、X線検査でも明らかな異常はありませんでした。これら所見よりニキビダニ症と診断、膿皮症の合併も示唆されましたが本症を遷延化させる明らかな基礎疾患はみられませんでした。