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症例52:耳介の隆起性皮疹
(ヨークシャーテリア,2歳齢,♂) 生後1歳頃、左耳尖内側に小さな隆起を認めた。その後明らかな進行はないが右耳介に同様の隆起を認め平成27年3月近医受診、外用ステロイドで治療後増数拡大し当科紹介受診となった。 ![]() 臨床診断のポイント
隆起性皮疹は主に内容物の有無とサイズにより区分されます。充実性皮疹は、1cm以下を丘疹、それ以上を結節、また扁平な隆起を局面と呼称しています。病理発生の主体は炎症と良性腫瘍であり、組織学的にどの部位に、どのような広がりを特徴とした疾患であるかによって、性状に差異が生じます。一般に真皮上層の病変では表皮の色調変化や付着物を伴い、下層を主体とした病変ではこれらを特徴としません。自験例では両耳尖内側に淡紅色の皮表変化に乏しい局面が散在していました。さらに皮表は平坦ではなく、丘疹の集簇を思わせます。したがって付属器に関連した真皮下層を主体とする炎症、特に付属器および皮下脂肪織の肉芽腫が予想されました。鑑別として、円形細胞腫瘍を考慮しました。 初診時方針のポイント
診断には皮膚生検による病理検査が必要です。肉芽腫の病因は異物、感染、非感染性に大別されます。自験例では両耳尖に同様の皮疹が慢性的に経過していることから異物は否定的、最近増数増大していることから感染症の評価を重視しました。生検採取組織の一部を、細菌培養検査と真菌培養検査にも供しました。自験例の病理組織では、真皮下層付属器に置換するように結節状の化膿性肉芽腫の集簇が観察されました。組織学的に感染因子の関与を示唆する所見は得られず、また細菌および真菌培養検査も陰性でした。以上より、非感染性化膿性肉芽腫/肉芽腫症候群Sterile Granuloma/Pyogranuloma Syndrome(SGPS)と診断しました。本症は病態不明ですが、臨床的に組織球反応性病変が予想されています。 |