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症例43: 腰のかゆみ
(ミニチュアダックスフンド,11歳齢,♂)

幼少より夏になると耳や間擦部にかゆみがみられ、2年前より発疹が拡大、昨夏には腰部にもかゆみが生じ、今夏は腰部から胸腰部背側に広範な発疹が生じた。なお耳や間擦部には脂漏や紅斑がみられた。

臨床診断のポイント

腰背部を中心に広範な脱毛と色素沈着、さらに赤い丘疹や紅斑の散在を認めます。脱毛が広範にみられますが炎症を示唆する皮疹は比較的地味でした。脱毛を伴う炎症は感染症で経験するも、通常両者の範囲や程度は同調し、さらに落屑や痂皮を顕著に認めます。この皮疹は感染症の典型といえずいわゆる皮膚炎が予想されました。皮膚炎の原因として重視される疾患のひとつがアレルギーであり、その診断には病歴と発疹の分布が重視されます。中年以降の夏にみられる腰部の皮疹はノミアレルギー性皮膚炎に合致しています。鑑別として腰部や後躯の身体異常(骨関節症、前立腺疾患、肛門嚢疾患)による外傷性皮膚炎を考慮しましたが、診察時にその異常を示唆する所見は得られませんでした。なお幼少よりみられる皮疹は間擦疹やマラセチア皮膚炎に合致、増悪因子としてノミ以外に加齢による身体疾患等の関与を疑いました。

初診時方針のポイント

念のため感染症に対する検査(皮膚掻爬検査、毛検査、細胞診)を実施、ノミアレルギー性皮膚炎の対応としてノミ取り櫛を使用した虫体や糞の検討、さらにIgE検査によるノミ関与の評価を実施しました。さらにマラセチア皮膚炎の悪化を誘導する基礎疾患の検討として血液検査、甲状腺機能のスクリーニング検査としてT4値の測定を実施しました。ノミの虫体や糞はみつかりませんでしたが(ノミアレルギーは一般にノミ寄生数が少ないことを特徴としている)、ノミアレルギーに対する治療的評価としてスピノサドを用いたアレルゲン回避を実施しました。血液検査やT4は特記すべき異常を認めず、血清IgE検査でノミに対する強陽性が認められました。この結果をもって皮膚炎の治療にプレドニドロンを導入、外用ステロイドの併用により内服の隔日投与、さらに漸減休薬を指示しました。