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症例37:鼻の角化性皮疹
(キャバリアキングチャールズスパニエル、9歳齢、避妊♀)

3年前より腋窩等に皮疹がみられ、近医にて膿皮症と診断され抗菌薬で治療されていたが徐々に改善に乏しくなり、平成22年8月11日当科紹介受診となった。略全身の皮疹とともに、加齢とともに顕在化した鼻や肉球の皮疹について相談があった(図)。

臨床診断のポイント

表皮は最外層に角質細胞で構成された角層を形成します。この過程を角化と呼び、正常な角化では表皮と角層の厚さがほぼ一定に保たれています。被毛のない鼻や肉球では皮表に隆起する角層を認めやすく、これを角化性皮疹と呼んでいます。鼻では、本態性として先天性魚鱗癬、鼻角質増殖症、家族性肉球角質増殖症等で生じ、さらに加齢による発症もみられます。また後天因として、外因性に微小気候、物理化学的刺激、感染症(外部寄生虫症、皮膚糸状菌症)、また内因性に代謝異常(内分泌疾患、代謝性表皮壊死症)、免疫介在性疾患(皮膚エリテマトーデス、紅斑性天疱瘡、落葉状天疱瘡、薬疹)、栄養疾患(亜鉛関連性皮膚病、低品質フードによる皮膚病)、皮膚リンパ腫などが関与します。自験例はキャバリアで中年以降に発症していることから、本態性と共に全ての後天因を考慮しました。

初診時方針のポイント

本態性の診断では犬種に留意しています。魚鱗癬はゴールデンやジャックラッセルで、鼻角質増殖症はラブラドールで、家族性肉球角質増殖症はゴールデンやラブラドール、加齢による発症はあらゆる犬種に認めますが、スパニエル系でより日常的に経験します。後天因の臨床的評価で明らかな体調不良等がみられなかったことから、加齢による現象と診断した対症療法による治療的評価が有用と思われました。なお後天因の除外を目的とした精査が必要であれば、感染症の検査(皮膚掻爬検査等による鏡検)、代謝異常には食事歴とともに血液検査、内分泌検査、画像検査、尿検査、免疫介在性疾患や腫瘍には皮膚生検が有用です。