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症例28:顔のかゆみ
(フレンチ・ブルドッグ,2歳齢,♂)

1歳の夏に顔や脇に痒みがみられ近医にて加療、秋になり自然軽快した。2歳の夏にも同様の皮疹が生じ抗菌薬等で治療したが、口吻付近の発作的な痒みが持続し、平成20年1月5日当科紹介受診。

臨床診断のポイント

 掻破領域に明らかな皮疹はみられませんが、掻破は口吻のしわの分布に一致しています。しわの谷(間擦部)には淡い紅斑や色素沈着がみられます。紅斑は通常炎症を反映しており、このような間擦部に一致する炎症を間擦疹(かんさつしん)と呼称しています。なお顔に痒みを生じる鑑別疾患に感染症やアレルギーがありますが、自験例ではこれらを示唆する特徴的な皮疹がみられません。また幼少より夏を中心に反復する痒みはアトピー性皮膚炎も鑑別ですが、発疹の分布は眼囲、口囲、外耳などを避けています。自験例の痒みは犬種固有の顔の構造を基底とした間擦疹と考えるのが妥当です。

初診時方針のポイント

 間擦疹は間擦部の皮脂や微小気候が関与したいわゆる湿疹(皮膚炎)であり、膿皮症やいわゆるマラセチア皮膚炎の病因的関与についても配慮が必要です。定型例であれば局所洗浄やステロイド外用薬により明らかな改善を認めることから、同処置による治療的評価が有用です。当施設では皮脂や皮表微生物の除去を目的として抗脂漏シャンプーや2%クロルヘキシジン含有サージカルスクラブなどで洗浄後、Strong classの外用ステロイド・ソリューションないしローションの塗布を指示しています。軟膏は基剤油分が間擦部に蓄積することから、その使用を控えています。