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症例22:耳介の壊疽
(雑種犬,1歳齢,♂) 初めて迎える冬に先立って、11月下旬両耳介の疼痛に気がついた。その後、両耳尖が徐々に硬く変形し近医を受診、精査目的にて紹介受診となった。両耳尖に健常部と境界明瞭な暗褐色を呈した壊疽を認めた(図)。一般状態に特記すべき異常はみられなかった。なお自験例は発症当時屋外で飼育されていた。 ![]() 臨床診断のポイント
組織が本来の構造と機能を失った不可逆性の変化を壊死と呼びます。これは皮疹名と言うより病理用語であり、融解壊死と凝固壊死に大別されます。前者は嚢胞となり、後者では通常線維化がみられます。黒色を呈す壊死は壊疽と呼ばれ、これは動脈の血行障害による壊死です。乾燥した壊疽は乾性壊疽、腐敗菌が感染すると湿潤し湿性壊死と呼ばれます。犬の乾性壊疽では加圧による血行障害、低温火傷、寒冷症、DICなどが鑑別です。自験例では全身症状なく、明らかな誘因もなく冬期に発症したことから、寒冷症が疑われました。 初診時方針のポイント
寒冷症とは寒冷刺激による血行障害の総称であり、犬ではクリオグロブリン血症、クリオフィブリノーゲン血症などが報告されています。その診断には、血清と血漿の寒冷沈降試験が必須です。加温したシリンジと37℃の恒温槽を用いて、血清と血漿(EDTA処理)をそれぞれ分離し、これを4℃に冷却し沈降物の析出を観察します。血清と血漿にて析出した蛋白が、37℃恒温槽にて溶解するとそれぞれクリオグロブリン血症とクリオフィブリノーゲン血症と診断されます。なお寒冷沈降試験では,採血器具の加温処理や恒温槽における静置の不手際によりクリオ蛋白を喪失しやすいので注意が必要です。自験例は血清と血漿で寒冷沈降物が検出され、冷蔵下で赤血球凝集がみられなかったことから、クリオグロブリン血症とクリオフィブリノーゲン血症の合併と診断されました。 |