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症例15:腰の結節(ケアンテリア,3歳齢,去勢♂)
平成13年6月20日去勢手術施行、その後術野付近の皮下に小さな硬結を触れ同年9月17日近医受診。無処置観察後皮疹が増数し切除術を施行、術後も皮疹が拡大した。プレドニンが奏功するが休薬による悪化を認め、平成16年5月25日当科紹介受診。両鼡径に赤褐色の光沢を有する油性滲出物を認める瘻孔を伴った淡紅色の皮下結節がみられ、同様の皮疹は右大腿外側、腰部から脇腹にも認められた(写真)。
![]() 臨床診断のポイント
隆起性皮疹が容積的に直径1cmを越えると結節と呼ばれます。結節は炎症あるいは増殖性疾患に起因することが多く、前者では肉芽腫を、また後者では主に付属器、結合織の良性腫瘍や、独立円形細胞の増殖をよく経験します。結節を呈する肉芽腫や皮膚良性腫瘍は通常発赤を強調せず、自験例はこの範疇と言えます。さらに瘻孔の形成は深部の炎症を示唆していることから皮下脂肪織炎が疑われます。皮下脂肪織炎の病因は感染性と非感染性に大別され、後者では異物、物理的刺激、脂質代謝障害(栄養、肥満、膵疾患、肝疾患、甲状腺機能低下症、ステロイド治療)、免疫異常(エリテマトーデス、薬疹、血管炎)、組織球系腫瘍などが鑑別です。しかしこれら要因を認知できない特発性もあり、発症には炎症を誘導しやすい何らかの宿主側要因の関与も予想されます。初診時方針のポイント
皮下脂肪織炎は臨床像とともに、滲出液の細胞診および皮膚生検により診断されます。また病因の検討として細菌および真菌培養検査、血液検査、血液化学検査、甲状腺ホルモン値、抗核抗体検査、画像検査などが有用であり、初診時に諸検査の必要性を説明しています。本症は感染性と非感染性に大別されることから、特に滲出液の細胞診と培養検査を重視しています。日常の診療では非感染性皮下脂肪織炎をよく経験し、その特徴として多数の過分葉好中球と脂肪を貧食した泡沫状マクロファージが観察されます。組織学的には皮下脂肪織を中心とした結節状の化膿性肉芽腫を呈し、脂肪を被包する好中球浸潤がみられ、その周辺に組織球系細胞が浸潤します。自験例では本症に典型的な細胞診および病理組織の所見が得られ、その他の検査で特記すべき異常を認めませんでした。本症は手術施行領域に発症していたことから、誘因として異物や組織挫滅等の局所刺激の関与を予想しました。 |